グラフィックデザイナーのためのRGBスケール

永原康史


 ディスプレイの色は、R(red)G(green)B(blue-violet)の3色で表示されている。ルーペで覗いてみればすぐわかる。赤、緑、青紫が繰り返し並んでいるはずだ。液晶ディスプレイならもっとわかりやすいかも知れない。赤、緑、青紫の液晶セル一組が画像1ピクセルに対応して並んでいる。いずれにしても、表示しているのは、R・G・Bの濃淡の繰り返しだ。それが一千万色以上にも見えるのは主に人間側の問題なのだが、なにもそれはディスプレイの色表示に限ったことではない。印刷の色も同じように、C(cyan) M(magenta) Y(yellow) K(black)のドットの組み合わせで表現されている。
 人間の目には、RGBそれぞれの色光に敏感な3種類の視細胞があり、それぞれの刺激の度合いによって色を知覚している。もう少し言えば、その刺激が視神経レヴェルで「赤─緑」「青─黄」という反対色のオン・オフ信号に符号化され、脳で色を認識するというのが一般的な説だ。だから、RGBとその補色であるCMYがそれぞれ3原色として用いられているのは理にかなったことなのだ。
 RGBは加法混色、光の3原色である。対してCMYは減法混色で印刷インキの3原色なのだが、印刷のプロセスカラーで表現される色は減法混色だけに拠っているわけではない。印刷に使われるCMYの透明インキは、重ねて刷られると減法混色を起こし、マゼンタとイエローで赤(R)、イエローとシアンで緑(G)、シアンとマゼンタで青紫(B)になり、また、CMY3色を重ねると黒に近い色(理論上は黒)になる。そのようにしてできたそれぞれの網点に反射した光が、新たに加法混色を起こし、私たちの目に入って色として知覚される。つまり、減法混色と加法混色の組み合わさったものが、カラー印刷ということになる。
 RGBでは、RとGでY、GとBでC、BとRでMが生じるので、ディスプレイ表示とカラー印刷は、両方ともRGB CMYの6色が基本になっていると考えていい。RGBの場合、3色が混ざると白(透明)になることは言うまでもない。
 減法混色は絵具に代表される。赤、青、黄がその3原色で、ヨハネス・イッテンの12色環では第1次色と呼ばれている。第2次色は1次色を混ぜ合わせた色、つまり紫、緑、オレンジで、1次色と2次色の間にひとつずつ色をつくっていけば全部で12色になる。12色の輪の向かい合う色、赤─緑、青─オレンジ、黄─紫が、それぞれ補色の関係になっている。
 ほとんどの人が最初に接する色彩理論はこの絵具によるものだろう。美術やデザイン関係の仕事に従事する者なら、まず頭の中にこのスケールがあると思っていい。ましてやグラフィックデザイナーならCMYKのプロセスカラーチャートもおおよそ頭に入っているはずだし、Webなどデジタルメディアを手がけるなら、さらにRGBのスケールも頭の中に入れておく必要がある。
 RGBはそれぞれ0〜255の整数で表わされるが、それはあくまでデータの表示である。数字から固有の色が導き出せるわけではない。ディスプレイなど出力装置によって、発色にかなり差があるからだ。カラーバランスやガンマ特性の違いだけではなく、色温度、コントラスト、ブライトネスなどユーザーが調整できる要素も多く、出力装置の数だけ色があるといっても言い過ぎではない。
 印刷物の色指定にも似たようなところはあるが、印刷の場合、色校正をチェックしたり、刷り出しに立ち合うことで、イメージ通りの色になるように工夫している。絵具の調色の場合はもっとわかりやすい。自分の目で確かめながら固有の色をつくることができるからだ。色材による彩色では感覚的に色を扱うことも可能だが、RGBによる表現ではそういった方法は通用しないと思った方がいい。よりロジカルに色を扱う必要があるということだ。
さて、ここに掲載したものは、カラーチャートではなくカラースケール、つまり物差しだ。色を捉えるためのものであり、色を選ぶためのツールではない。
 この立方体のカラースケールは、ウィリアム・J・ミッチェルのRGBキューブと藤幡正樹氏のカラー・キュービック・パレット(美術出版社刊『カラー・アズ・ア・コンセプト』参照)に着想を得てつくったもので、R-G-B, C-M-Y, BK-Wを頂点としたキューブの中に、RGBとCMYKで得られるすべての色がマッピングできるようになっている。1辺を256階調に分ければ1677万7216色のフルカラースケールになるのだが、ここではサイズや使い勝手を考えて、1辺を6階調とし、216色を積み上げたキューブとした。これは、Web上でのカラー表示システムであるPICS(Pantone Internet Color System)に依っている。

(グラフィックデザイナー・永原康史事務所主宰)


※詳しくは『デザインの現場』1998年8月号をご参照ください。